測定システム解析
1データ
Excel の表をコピーして、表の左上のセルに貼り付けられます。行は「測定者 × 回」、列は「部品」です。測定者名・部品番号の見出しごと貼り付けても読み取ります。縦長の表(部品・測定者・回・測定値の 4 列)も読み込めます。
データはこの端末の中だけで計算し、外部に送信しません。入力は自動でこの端末に保存します。
2計算方法
1データ
基準値(校正値)が分かっている部品を、同じ測定者が 10 回以上測った値を入力します。
1データ
測定範囲にわたって基準値の異なる部品を 5 個以上選び、それぞれ 10 回以上測った値を入力します。表の 1 行目が基準値です。
1データ
基準部品を定期的に(毎日・毎週など)測った値を、測った順に入力します。サブグループサイズが 2 以上なら、1 回に続けて測った個数ごとに区切って X̄-R 管理図、1 なら I-MR 管理図にします。
1データ
基準部品を同じ位置で 25〜50 回続けて測った値を入力します。Type-1 は AIAG MSA 第4版には含まれない評価です(VDA 5 などで使われる一般的な式で計算します)。
1データ
合否などの判定を入力します(OK/NG、1/0、合格/不合格 など)。1 列目は基準の判定(分かっている場合)、2 列目以降は測定者ごと・回ごとの判定です。部品の並び順は回ごとに変えて判定するのが原則です。
Excel の表(見出し行と部品番号の列があってもよい)をコピーして、表の左上のセルに貼り付けられます。
測定システム解析(MSA)の解説
このツールは AIAG『Measurement Systems Analysis Reference Manual』第4版(2010)の手順で計算します。Type-1(Cg・Cgk)だけは第4版に含まれないため、VDA 5 などで使われる一般的な式で計算します。
ゲージR&R(計量値)
複数の測定者が、複数の部品を、それぞれ複数回測ったデータから、測定のばらつきを「繰り返し性」と「再現性」に分けます。
- 繰り返し性(EV):同じ測定者が同じ部品を繰り返し測ったときのばらつき(主に測定器)
- 再現性(AV):測定者による平均の違い
- 交互作用(IA):部品によって測定者の差が変わる成分(ANOVA 法だけ)
- GRR = √(EV² + AV² + IA²)、部品変動(PV)、全変動(TV) = √(GRR² + PV²)
表の値はすべて標準偏差(σ)です。6σ は「調査の変動」の幅、%寄与は分散の比、%TV と %公差は標準偏差の比です。
判定の目安(AIAG)
| %GRR | 判定 |
|---|---|
| 10% 未満 | 合格 |
| 10〜30% | 条件付き(用途の重要度、測定器の費用、修理費などを考えて判断) |
| 30% 超 | 不合格(改善が必要) |
あわせて ndc(区別できる区分の数) = 1.41 × PV / GRR(切り捨て)が 5 以上であることを確認します。
%GRR の分母は、工程管理に使う測定なら全変動(%TV)、製品の合否判定に使う測定なら公差(%公差 = 6 × GRR / 公差幅)が適しています。調査に使った部品のばらつきが工程を代表していないときは、既知の工程の標準偏差を入力すると、それを全変動として使います(PV = √(TV² − GRR²))。
平均・範囲法
- EV = R̿ × K1(K1 = 1/d2、d2 は回数で決まる)
- AV = √[(X̄diff × K2)² − EV² / (n r)](根号の中が負なら 0)
- PV = Rp × K3
- K2・K3 は 1 組だけの範囲から σ を推定する係数 1/d2*(測定者数・部品数で決まる)
このツールは d2・d2* を数値積分で求めます。マニュアルの表(4 桁)とは最後の桁が違うことがあるので、マニュアルの例題や他のソフトと突き合わせるときは「係数にマニュアルの表の値を使う」を選んでください。
範囲の管理図で上限(D4 × R̿)を超える点は、測り間違いや測定方法のばらつきを疑い、測り直してから解析します。平均の管理図では、管理限界の外に半分以上の点があるのが望ましい状態です(部品のばらつきを測定システムが見分けられている)。
分散分析(ANOVA)法
部品 × 測定者の二元配置(繰り返しあり)の分散分析から分散成分を求めます。
- 繰り返し性 = MS(誤差)
- 交互作用 = (MS(部品×測定者) − MS(誤差)) / r
- 再現性 = (MS(測定者) − MS(部品×測定者)) / (n r)
- 部品変動 = (MS(部品) − MS(部品×測定者)) / (k r)
負になった成分は 0 とします。交互作用が有意でないとき(既定は p > 0.05)は、交互作用を誤差にまとめて(プールして)計算し直します。交互作用を見落とさない点と、データから求める推定の精度が高い点で、ANOVA 法を推奨します。
データの集め方
- 部品は工程のばらつきの範囲を代表するものを 10 個程度、測定者 2〜3 人、繰り返し 2〜3 回
- 部品の順番は回ごとに無作為に変え、測定者が前の値を知らない状態で測る
- 測定器の分解能は、公差(または工程変動)の 1/10 以下
偏り(独立サンプル法)
基準値が分かっている部品を 10 回以上測り、平均と基準値の差(偏り)が 0 と見なせるかを t 検定で確かめます。
- 偏り = 平均 − 基準値、σr = 測定値の標準偏差、σb = σr / √n
- 偏りの信頼区間 = 偏り ± t(n−1, 1−α/2) × σb
信頼区間が 0 を含めば、偏りは許容できます。
直線性
測定範囲にわたる基準値の部品を 5 個以上、それぞれ 10 回以上測り、偏り(測定値 − 基準値)を基準値に回帰します。
- 回帰直線:偏り = b + a × 基準値
- 信頼帯:b + a x ± t(gm−2, 1−α/2) × √(1/gm + (x − x̄)² / Σ(xi − x̄)²) × s
「偏り = 0」の水平線が、測定範囲全体で信頼帯の中に収まれば直線性は許容できます。傾き・切片の t 検定もあわせて表示します。全変動 σ を入れると、%直線性(|a| × 100)と直線性(|a| × 6σ)を表示します。
安定性
基準部品を定期的に測った値を管理図にし、時間とともに偏りやばらつきが変わらないかを見ます。管理図の異常判定は JIS Z 9020-2(ISO 7870-2)の 8 つのルールです。サブグループサイズ 1 のときは I-MR 管理図、2 以上のときは X̄-R 管理図にします。
Type-1(Cg・Cgk)
AIAG MSA 第4版には含まれません。1 つの基準部品を同じ位置で 25〜50 回続けて測り、測定器だけの繰り返し性と偏りを評価します。
- Cg = (K × 公差) / (L × s)
- Cgk = (K/2 × 公差 − |平均 − 基準値|) / (L/2 × s)
一般的な設定は K = 20%、L = 6(s の 6 倍)、判定の下限 1.33 です。社内規定や顧客の要求に合わせて変えられます。
計数値(クロス表法)
合否判定のように数値でない測定について、50 個程度の部品を測定者 3 人が 3 回ずつ判定したデータから評価します。
- κ(カッパ):偶然の一致を除いた一致の度合い。κ = (一致率 − 偶然の一致率) / (1 − 偶然の一致率)。0.75 を超えれば良い一致、0.40 未満は一致が悪い
- 有効性:全回とも基準と一致した部品の割合(90% 以上 合格、80〜90% 条件付き、80% 未満 不合格)
- ミス率:不合格品を合格と判定した割合(2% 以下 合格、2〜5% 条件付き、5% 超 不合格)
- 誤警報率:合格品を不合格と判定した割合(5% 以下 合格、5〜10% 条件付き、10% 超 不合格)
有効性の信頼区間は二項分布の正確な区間(Clopper-Pearson)です。基準の判定がないときは、測定者どうしの κ と自己一致(全回で同じ判定をした部品の割合)だけを計算します。部品には合格・不合格の境目に近いものを含めないと、測定システムの弱点が見えません。